科学論文の読み方。はじめての論文で困った!というあなたに【研究室のボスには内緒です】

ポスドク生活

研究室に配属され、論文を渡されて、
始めて論文を読むことになったあなたは、こんな疑問を持ったと思います。

  • どうやって読むの?
  • どこから読むの?
  • なんで論文読むの?



そんな途方に暮れてしまったあなたに向けて、
順を追って、生命科学系の論文の読み方について解説していきます。




私は、研究生活も10年以上を越え、
論文を読む、書くことを日々続けています。



この10年で読んだ論文数はもう数えていませんが、
その中で見えてきたことが、研究の世界に足を踏み入れたあなたに、
少しでもお役に立てばうれしいです。



論文の読み方は大きく2つに分けることができますので、
読み方をうまく変えることで、ちょっと楽に論文が読めると思います。



個人的には、論文読みはミステリー小説を読むような感覚に近いです。



ぜひそんな気楽な気持ちで論文を読んでみて欲しいと思います。



状況ごとの論文の読み方に分けて解説していますので、
あなたの状況にあった部分を読んでみてください。

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論文の読み方は目的に応じて変える

two-way

論文を目の前にして、どう読むか悩んでいると思います。



目的に応じて論文の読み方を変えたほうが良いので、
まずその論文を読む目的を明確にしましょう



大きく分けると次の2つになります。

  1. 自分の研究に役立てるために読む論文
  2. 研究室で論文紹介をするために読む論文



この2つで論文の読み方を変えた方が、効率良くできます。



特に論文を読みなれていない場合は、
第一に論文を読む目的を明確にしましょう。

論文の読み方―自分の研究に直接役立てるために読む時

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新しい情報を入手するための論文の読み方

はじめて論文を読む場合、
ほとんど全てが新しい情報だと思います。



新しい分野の論文を読む時も同じです。



専門用語もわかりませんし、
見慣れない略称が論文を読んでいてあなたをさらに混乱させるはず。



少しでもわかりやすくするため、
順を追って読んでいきましょう



完璧に読もうなんて考える必要はないですから、
変なプレッシャーは無用です。



「わからない、どうしよう!」と焦らずに読んでいきましょう。

論文のintroductionを読んでみます。

Introductionは本来その論文を理解しやすくするために、
導入部に書かれている文章です。



うまく書かれている論文は、
introductionで必要なキーワードを得ることができ、
論文の内容が理解しやすいように書かれています。

わからない専門用語を検索して、日本語で調べてみましょう。

専門用語に関する情報を日本語で理解した方が最初は早いです。



英語だけで理解すると思わず、
日本語で書かれている情報を積極的に読んでください



その専門用語に対する背景がなんとなくわかってきた方が、
論文の理解度が高まります。

本文を読んでいきましょう。

専門用語やわからない言葉を日本語でざっと理解することができたら、
テキストを読んでいきましょう。



Resultに書かれている実験結果を、
図を見ながら理解できるか考えていきます。



はじめはどのような実験を行って、
どういう結果が出るかもわからないと思いますので、
こんな実験系を行うと、
こんな結果になるというくらいの理解でよいです。



だんだんと実験方法と結果が結びついてくるようになります

Discussionを読んでいきます。

Discussion部分は、
新しい情報を入手したいだけであれば、
あまり重視しなくてもよいと思います。

著者らの考えが述べられている部分ですので、
その研究を深く掘り下げたい時、
著者の考えを知りたい場合に読むという感覚でよいです。

とにかく新しい情報を得るために論文を読む場合は、
IntroductionとResultを見ることを繰り返して、
たくさん論文を読むことになります。

Discussionは論文の質にもよりますが、だらだらと考えを述べている場合も多く、解釈がわかりにくい場合もあるので、始めのうちはDiscussionで情報を入手することにこだわらず、その論文の結果を純粋に読み取る練習が大事です。



Discussionがわからないということをよく聞くのですが、
Discussion自体の出来が良くない場合があるので、
はじめのうちはわからなくても良いです。

論文の質は、
インパクトファクターで評価されてしまいがちですが、
実はいろいろな事情があります。

詳細は、 インパクトファクターの調べ方を知って、学術雑誌の事情を観察しませんか【Impact factor】 にまとめていますので、ご興味があればそちらをご覧ください。

実験方法が知りたい時の論文の読み方

methods

私たちは実験方法や使っている試薬、抗体などを調べる時に論文をたくさん読みます

この場合、論文の全体を読むことはほとんどしません

論文のMaterials and Methodsに注目して読みますが、
結果のFigureも見るようにしてください。

Figureの結果があまりきれいでない場合は、
その実験方法や試薬が最適ではない場合があるので、
ほかの論文を探し、同じように読んで、
一番良さそうな実験方法や、試薬を探すように論文を読みます。



「良い実験系や試薬を探してください」と言われ論文を読む必要が出たとき、
研究室の指導教官が求めていることは、

  • この論文ではこういう試薬、実験方法を使って、こういう結果が出た。
  • ほかの論文ではOOだった

というように調べてもらうことなので、
これらを説明できるように、まとめると良いと思います。

他のグループが同じような研究をしているか調べる時の論文の読み方

先行研究や競合研究グループの研究を調べるために論文を読む場合があります。



この場合は、あなたの研究内容に非常に近い場合は論文の詳細を読んでいくことになります。



まったく同じ研究を行う意味はないですし、
そこから発展していくように研究を構成していくための読み方になります。

研究室に配属されたばかりで、
このような目的で論文を読むことはないと思いますので、
今は気にしなくてもよいと思います。

あなたの研究室の指導教官はそのような論文の読み方をしていると思います。

データの質も見ながら読むので、
一番細かく読む方法ですが、
今回は割愛します。

論文の読み方―研究室で論文紹介するために論文を読む時

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論文紹介のための論文の読み方

論文紹介のために論文を読む場合、
少し読み方、視点を変える必要があります。



この時の論文を読む目的は、
発表を聞いてくれる人にメッセージを届けることです。

正直、あなたの勉強という意味合いよりも、
人に伝えることを意識した方が、
周りに理解してもらいやすく、
論文を読んだ満足感を味わうことができると思います。



次のことを確認します。

  • 紹介する論文がどのような狙いで行われた研究なのか
  • どういう結果が得られ、どういう結論が言えるのか



このことをわかりやすく伝えることです。
伝えたい情報を集める意識で読み進めていきます。

例えば、実験方法が新しいということを、
あなたの論文から伝えたい場合、
その方法がどのように新しいのかに注目して論文を読む必要があります。



新しく病気のターゲットとなる分子が見つかったという論文なら、

  • 今までのターゲットと比べどう?
  • 何が新しい?
  • どうやって見つかった?

などストーリーがあると、
聞いている人にメッセージが伝わります。



論文紹介の時の論文の読み方は、
聴いてくれる人が理解しやすいことを重視する必要があります。
参考文献もあわせて読み、プレゼンを意識した形になります。

論文紹介のための論文の読み方の具体的な手順

伝えたいことをしっかり伝える情報を得るために論文を読むことを意識して下さい。

  1. あなたがその論文から伝えたいことを探す
  2. その伝えたいことを理解してもらうために必要な情報を見つける
  3. 結果が、そのメッセージを表しているか、考える。



とにかくはじめのうちから、
徹底的にその論文が伝えたいメッセージを探し、
データに裏付けされているかを判断する習慣をつけると後々に役立ちますので、おすすめです。

論文の読み方のまとめ

論文の読み方は、目的によって少し変わってきます。
自分の勉強のためなのか、人に伝えるためなのか



自分の勉強のためなら、
何が知りたいのかを明確にします。


実験方法なのか、
使っている試薬やキットなのか、
研究背景なのか。



読む目的を達成することができれば、
正直言って、論文を全部読む必要はありません。

知識を増やして読み物として楽しむなら、
細かく読んで問題ないですが、
まずは目的重視で読みましょう

論文を読むことに慣れると、
ちょっとした楽しさを見出す読み方もあるので、
また機会があればご紹介したいと思います。

また、論文に慣れてきて、海外での研究も気になってきたら、 本ブログ内の海外でポスドクになって気づいた本音【悔いなし】 もご覧ください。私の海外でポスドクになって気が付いたことをまとめています。

論文を読みなれていないと困ってしまうことは誰しもが通ってきた道です。


近くの先輩や先生に相談して読み進めても怒られることはありません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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